近視の進行予防対策の一つに「低濃度アトロピン点眼」があります。
アトロピン自体は昔から調節麻痺剤の一つとして使われてきました。
しかし当時の使用されていた濃度だと副作用が強く、瞳孔が開いたままの状態が数日続いてしまい、かなり眩しくて目を開けることができない人もいました。
しかし近年、海外の研究でアトロピンをかなり低濃度(0.01%程度)にすると副作用がかなり抑えられることと、近視の進行が抑えられると発表されました。
未使用者と比べるとおよそ50%前後、近視の進行が制御できたのです。
この辺の詳しい内容を知りたい方は当ブログ過去記事「目薬で近視の進行を防ぐ!?」をご覧ください!
その後各国でも臨床治験が行われていて、もちろん日本でも行われています。
しかしその結果はかなり差がある内容となっており、「効果なし!」とも「効果あり!」ともハッキリ言いにくい状態になっています。
そのせいか日本では未承認の点眼薬となっていて、利用者は自費で購入せざるを得ないのが現状です。
そんな中、アメリカでの低濃度アトロピン研究の結果が報告されました。
今回はそれを基に低濃度アトロピン点眼について解説していきましょう。
〇アメリカでの研究結果
今回の研究はオハイオ州立大学の研究グループによるもので、3年間の使用者と未使用者の比較データのようです。
・対象 平均年齢8.9歳で±2歳の子供573人。(そのうち女子が54.7%)
・無作為に3グループに分け、濃度0.01%・濃度0.02%・偽薬(プラセボ)を1日1回点眼。
・3年後に抑制効果が見られた割合が 【0.01%→28.5%】【0.02%→22.1%】【プラセボ→17.5%】
という内容です。
日本で低濃度アトロピン点眼薬は「マイオピン」と言う品名で販売されています。
濃度は0.01%と0.025%がありますが、日本での研究では0.01%よりも0.025%の方が効果が高いとされています。
しかし今回の結果はそれと逆に0.02%の方が効果が低いものでした。
そして研究者は「この結果はあくまでも”3年内のアトロピン点眼による影響”であって、これが成人後の眼病リスクを抑制できるかどうかは更なる長期的な検証が必要」だと言っています。
また、「いつまでこの点眼治療を続けるのか?」という疑問もある、と話しています。
現状としては【進行が落ち着いたら一旦点眼を中止し、再度進行が見られると点眼を再開する】と言うケースが多いようです。
〇研究結果の考察
先ほども述べた通り、この研究では0.01%の方が0.02%よりも効果が高い、となりました。
なぜ日本でのデータとは違う結果になったのでしょう?
考えられる要因としては 〇民族的(遺伝的)要因 〇環境的要因 この違いでしょうか。
今回の発表では子供の民族的特徴まではわかりませんでした。
アメリカなので白人・黒人・アジア圏など色々な人種の子供達だったかもしれませんし、そうでないかもしれません。
民族的な差は別の研究でも指摘されていましたので、十分ありうる話だとは思いますが現状は不明です。
また、日本とは生活様式・環境も大きく違います。
スマホやタブレット・PCなどの使用状況は似たようなものだと思いますが、家の大きさとか室内の照明とか細かい部分で違いはあると思います。
特に家の広さは昔から近視や視力低下に影響を指摘されてきました。
「日本の家はウサギ小屋」的な言われ方をされたこともありましたが、部屋が狭いと必然的に近くを見てしまいます。
また照明も絶対ではありませんが日本の家の方が明るくしている印象です。
それがかえって目の負担になっている可能性も考えられます。
近視の進行にはこうした環境要因も影響が強いため、中々判断が難しいところです。
日本の研究ではもう一つ0.05%という濃度も使われましたが、これは副作用が強めだったことと点眼を中止した時のリバウンドがでたため、あまり使用されていません。
現在の日本では「まず0.01%を使って見て効果がイマイチなら0.025%に変更」というパターンが多いようです。
0.01%と0.02%のどちらが効果が高いのか?は、今後の研究でまた明らかになるのではないでしょうか。
〇いつまで続けないといけないのか?
近視の進行予防対策について、「いつまでやらないといけないの?」というのは気になりますよね?
これは点眼治療だけでなく、京阪視力回復アカデミーの視力回復トレーニングにしても同様です。
視力回復トレーニングは視力回復だけでなく、近視の進行予防も目的としていますから。
その中で一つの目安として「成長期の終了時期」があります。
子供の近視が進行する原因として、眼球の成長があるのはご存知の通りでしょう。
それが終了すると比較的近視の進行も落ち着きやすくはなります。
しかし近年は成長期が終了した後でも、近視の進行が止まらないケースが増えてきています。
そのため点眼薬にしろ視力回復トレーニングにしろ、一旦終了した場合でも定期的な目のチェックは必要性が高いです。
視力低下・近視の進行の予兆を素早く発見し、対策をとれれば大幅な悪化は防げるでしょう。
ただし、京阪視力回復アカデミーに通われている皆さんを見ていると、一旦トレーニングを終了した後に再び行なうというのは、非常に難しいように思います。
良く言われますが「トレーニングをやめたら下がった」という話ですね。
見えにくくなっても再びトレーニングをするというよりも、低下を予防するのは諦めてメガネ・コンタクトレンズ・人によっては手術等を行なう人もいるでしょう。
ですので我々としては完全にトレーニングを終了するよりも、ペースを落として細々と続けておく方がよいのでは?と思っています。
その方が心理的・時間的な負担も少ないでしょうし、完全に切れてしまってからの再開よりもハードルは低いと思います。
PC・スマホの使用からコロナ禍を経て、大人でも視力低下が問題視される時代となってしまいました。
そういった意味では近視の進行予防は一生の課題といっても過言ではありません。
先日も40代の方がレーシック後の再低下のご相談に来られました。
この1~2年で一気に悪化したそうです。
人間は外部の情報の80%くらいを目から得ている、と言われています。
強度近視は白内障・緑内障・網膜剥離といった眼病を発症するリスクも上がってしまいます。
人生80年という今の時代。
子供の時から近視になり進行し続け、50代くらいで眼病を発症してしまったりすれば、残り30年の人生はかなり大変なものとなるでしょう。
それを防ぐための対策の一つとして、近視の進行予防があります。
点眼治療も効果が判明してから10年も経っていない状況で、まだまだ手探り状態です。
一番有効な使用法や量法が早く判明し、且つ日本でも承認されて使いやすい状況が早く来ると良いですね。
参照ページ:
@DIME「点眼薬で子供の近視の進行を予防できる可能性 オハイオ州立大学報告」
関連ページ:
京阪視力回復アカデミーの視力回復トレーニングは、低濃度アトロピン点眼との併用は全く問題ありません。
まだ未承認の状態なのであまり大々的におススメまではしていませんが、使用が可能な方にはトレーニングとの併用もお話したりします。
一つの対策よりも複数の対策を組み合わせた方が、より高い効果が得られると思っております。
京阪視力回復アカデミーの視力回復をご希望の方は
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