先日、NHK「クローズアップ現代+」という番組で、近視の特集がありました。
皆さん、ご覧になりましたか?
◇強度近視は「目の問題」だけではない◇
番組の内容としては、
〇子供の強度近視が増加していて、かなり深刻な状況である。
〇大人になっても近視の進行が止まらない「成人進行近視」の一例として49歳女性の例を紹介。
〇強度近視になると「網膜剥離」「緑内障」などの眼病発症の恐れがあるが、認知症やうつ病になる可能性も指摘されてきた。
〇シンガポールで目薬による近視の進行抑制が行われており、日本でも治験が始まっている。
〇台湾やオーストラリアでは、日光を浴びることで近視の進行抑制を図っている。
〇日本でも国を挙げての対策が求められる。
おおよそこんな感じでした。
番組で強調されていたのは「強度近視の危険性」だったように思います。
近視が強くなればなるほど眼病にかかる可能性が上がり、最悪の場合失明する恐れがあることは、当ブログでも度々お話してきました。
しかし最近の研究によれば、強度近視は認知症やうつ病にも関わる可能性が出てきているそうで、どうも目だけの問題だけではないようなのです。
「近視?別にメガネかければ見えるんで、悪くなっても気にしないんだけど」な~んて考えている方もいると思います。
しかし、こういう考えは非常に危険です。
特に近視が進行しやすい子供さんほど、近視の進行を予防する対策をとっておかないと、最悪の事態を招きかねません。
◇視力検査だけでは近視の早期発見が難しい◇
身体の成長期に近視が発生すると、成長期が終わるまでは近視が進行し続けます。
近視はピントが目の底の網膜よりも手前にずれている状態ですが、眼球が成長期に大きくなっていくと、余計にピントのずれが広がってしまうのです。(下図参照)。
そして近視になった年齢が低ければ低いほど、眼球が大きくなる期間も長いので、それだけ強い近視になる恐れが高くなってしまいます。
例えば6歳で近視になった場合、成長期が17歳くらいで終了したとしても、10年以上近視が進行していきます。
でも、13歳で近視になった場合だと、同じ17歳で成長期が終了した場合、近視が進行する期間は4年ほどしかありません。
当然、前者の方がより強度の近視になってしまいますので、【いかに近視の発生を遅らせるか?】ということも、非常に重要なポイントと言えるでしょう。
ここで一つ問題があります。
それは、現状就学時検診や学校検診は、裸眼視力のみの検査しか行なっていない、ということ。
裸眼視力の低下が発覚した児童のみ、眼科に行って近視や乱視の度数などを検査して初めて、子供の状態がわかる状況です。
そして、学校の視力検査はとても簡易的です。
大人数を一気に測定するので仕方ない部分もありますが、結構な数の近視のお子さんを見逃している可能性が高いと思います。
特に視力が0.9とかそのレベルだと、日によっては1.0が見えたりすることもありますので、初期の軽い近視は見逃しがち。
軽い近視をいかに早く発見して対策をとるか?が重要なのに!!!
◇大事なのは「屈折度数検査」◇
クローズアップ現代+でも言われていましたが、我々も「屈折度数検査」が一つカギを握ると思っています。
実は屈折度数-0.25Dとか-0.50D程度のとても軽度な近視は、裸眼視力が1.0あることも珍しくありません。
こうした軽い近視は、裸眼視力検査では発見できないことが多く、見逃されて放置されてしまいます。
その結果対策が取られず、どんどん近視が進行してしまうのです。
でも屈折検査を行なっておけば、「視力は問題ないけれど、軽い近視が始まっている可能性があるので、目の使い方を一層気を付けよう」という話にもなってきます。
ここで対策をとるかどうかはその人次第ではありますが、少なくとも「視力低下に気づかなかった。こんなに悪くなるなんて!」なんてことはかなり無くせるハズ。
学校検診では屈折度数を測定し、おや?という数値が出た子だけ視力も測定する、というのがベストだと思います。
また、すでに近視であることが判明し、メガネやコンタクトレンズを作成したようなお子さんも、屈折度数の測定は重要です。
それは屈折度数でおおよその眼球のサイズが推測できるから、です。
近視が進行すると眼球自体が変形し、後方に伸びていきます。
おおよそで屈折度数が-3.00Dになると、眼球が約1㎜伸びていると言われます。
-6.00Dだと約2㎜、-9.00Dだと約3㎜程度、眼球が伸びてしまっていると考えてよいでしょう。
そして眼球が伸びれば伸びるほど、網膜や視神経・脈絡膜など眼球そのものに問題が発生する恐れが高くなってしまいます。
クローズアップ現代+でも”小学生で眼球サイズが約28㎜”というケースが紹介されていましたが、成人の平均眼球サイズが約24㎜なので、これは相当の強い近視です。
約28㎜の眼球だと、屈折度数が-12.00Dくらいになると思われます。
-12.00Dの近視は、大人でもそう多くはないレベルの近視ですし、加えてまだ成長期が残っているご年齢でしたので、-12.00Dでは止まらない可能性が高く、将来的にメガネやコンタクトレンズでの矯正ができるかどうか、とても心配です。
◇国・民間挙げての近視予防対策を◇
日本で近視の対策が遅れている原因として、国の対応の無さが挙げられていました。
それも一つの要素ではありますが、もう一つは過去の眼科の対応が大きかったのではないでしょうか。
「近視はメガネかければ普通に見えるから、何の問題もない」
「近視が進んでもメガネの度を上げれば見えるようになるから」
「何かしたって結局近視は進むから意味がない」
これらはこちらにご相談にきたご両親から、お子さんを眼科に連れて行った際に言われた話として、筆者も何度も何度も聞きました。
「眼科に行ってもメガネ勧められるだけで、回復とか低下予防とかの話は全くなかった」なんて仰る方も、多々いらっしゃいます。
本来であれば一番近視対策に力を入れないといけない眼科医がこんな感じでは、近視対策なんてできる訳がありません。
ただ、近年は眼科も近視対策に力を入れている所も増えてきているようで、番組でも東京医科歯科大学の「先端近視センター」などが紹介されていました。
こうした眼科医が増えてきて、近視対策が広まると良いですね。
国も学校検診の際に視力だけでなく、屈折度数の検査を行なうように、形を変えていってほしいと切に願います。
京阪視力回復アカデミーでは屈折度数の確認を重視しており、視力回復トレーニングに通っている方は、毎回屈折度数をチェックしています。
他の視力回復トレーニングセンターだと、屈折度数の測定をほとんど実施していない所があるような話も聞きますが、それでは意味がないでしょう。
屈折度数はトレーニング中のご本人だけでなく、ご兄弟やご両親もチェックできますので、ご希望の方はご相談ください。
参照
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