突然ですが、この記事をご覧になっている皆さんに質問です。
あなたは日ごろの生活の中で【5m先の直径1㎝程度の文字を読む機会】はどのくらいありますか?
①めっちゃある
②たまにある
③ほとんどない
多分、一番多いのは③の「ほとんどない」ではないでしょうか。
では、もう一つ。
あなたは日ごろの生活の中で【30㎝先の直径1㎝程度の文字を読む機会】はどのくらいありますか?
①めっちゃある
②たまにある
③ほとんどない
多分、一番多いのは①の「めっちゃある」ではないでしょうか。
「日本人は遠くを見る機会よりも近くを見る機会の方が多いので、近視であることは決してマイナスばかりではない」
これは我々も概ね同意です。
実際、1年半前にもそんなような記事(日本人には「軽い近視が一番あっている」)を掲載していますしね。
ただ、昔「近視は日本人の生活に適しており、ある意味進化した結果だ!」みたいなことを言ってた方がいましたが、それはさすがに言いすぎかと・・・。
少々専門的な話になりますが、視力や見え方を把握するうえで、とても重要な要素に「屈折度数」というものがあります。
(詳細は当ブログ記事「屈折度数を知ろう!前編・後編」参照)
この屈折度数で「裸眼でどのくらいまで見えているか?」ということがわかるんです。
例えば、屈折度数-1.00Dの人の場合、1mより近い距離はクリアに見えていますが、これが屈折度数-4.00Dの人になると、クリアに見える距離が25㎝程度まで縮まります。
-4.00Dになると30㎝離すと物がぼやけて見えてしまうわけです。
30㎝の距離で物がぼやけてしまうようでは、当然日常生活には支障がでてしまいますね。
そのためメガネ(もしくはコンタクト)をかける訳ですが、一般的にメガネ(コンタクト)は遠くを見やすく処方されているため、近くを見るときはピント調節にかかる負担が大きくなります。
若いうちは目のピント調節力で、近くにもピントを合わせられるのですが、40歳代後半くらいから老眼が出始めると、今まで近くも見えていたメガネが、いくら頑張っても近くがぼやけ始めます。
いわゆる”老眼”の始まりです。
こうなると非常~にめんどくさいことに、遠く用のメガネと近く用のメガネを2本用意して、メガネの使い分けをしないといけません。
二重焦点レンズ、俗にいう遠近両用メガネもありますが、まだあまり快適に遠近両方にピントを合わせられるとは言い難いもの。
でも、これが屈折度数-2.00D~3.00Dくらいの近視だと、ピントが合う範囲が30㎝~50㎝に入るため、うまくすれば近くは裸眼で問題なく見えちゃいます。
そうすればメガネは遠くを見るとき用の1本で済みますから、とても楽ちんです!
逆に今まで視力が良く、裸眼で1.2とか1.5あった方。
当然遠くも近くも裸眼で見えていましたが、老眼になると近くだけ見えなくなりますので、いわゆる老眼鏡が必要になります。
この場合は近くだけメガネをかければよいので、前述の近くと遠くの2本メガネを使うケースよりは楽そうですが、実はそうでもないようなんです。
今までいろんな方々に話を聞いてきましたが、今まで視力が良かった方は、メガネに相当の拒否反応を示すことが多く見られます。
「周りはメガネをかけている人が多いのに、自分は普通に裸眼で見える」そうした優越感的なものもあったのかもしれません。
また、”今までレンズを通して物を見る”ということに慣れていないため、いざメガネをかけても違和感を感じる方も少なくないようです。
つまり、視力が良い場合は老後に少々苦労する方が出てしまうみたいです。
「若いうちは視力が良い方が楽だけど、年を取って以降は逆に視力が良い方が苦労する」これはまぎれもない事実です。
一番最初の設問に戻りますが、現在の日本人の生活環境は、明らかに近くを見る機会の方が多くなっています。
遠くが裸眼で見えること自体は、決してマイナス要因ではありませんし、どちらかといえばプラス要因であることは間違いありません。
では、「遠くが見えるけど近くが見えない」ことと、「遠くは見えないけど近くは見える」ことでは、どちらが今の日本では生活に有利でしょう?
多分後者だと思うんですよね。
もちろん、近くも遠くもどちらも見えるのが一番なのは言うまでもありませんが。
実は筆者がちょうど屈折度数-2.00D前後なんです。
普段の生活は裸眼でほとんど困りません。
メガネも一応持ってはいますが、あまり使うことがなく、少々ほこりをかぶっている状態。
年齢的に老眼が始まりそうなところですが、近くも裸眼で全く問題なく見えますし、疲れもほとんどありません!
・・・なんか自慢するようでスミマセン。
老眼は通常40歳代後半くらいから出始めるのが一般的。
平均寿命が70歳とか80歳である日本人だと、老眼になってから30~40年ほど生きていかないといけません。
そうした時に一番近くも遠くも困りにくいのが、屈折度数-2.00D~-3.00Dなのです。
子供さんの場合、こちらにご相談に来られるケースとしては、屈折度が-3.00D未満であることが多いです。
その場合は、とにかく全力で近視の進行を遅らせて、大人になった時に手元が裸眼で見えるようにすること。
裸眼視力としては0.5~0.6くらいをキープすること。
これが一番の目標といっても過言ではありません。
「車の運転はメガネをかけるけど、普段の生活ではメガネはかけなくても困らない」こうなったら最高ですね!
それに対して大人の場合は、屈折度数を大幅に減らすのは難しいので、裸眼視力を最大限復活させて、できれば手元は裸眼で見るくらいになれば、万々歳だと思います。
そうすればメガネも1本で済みますから、老眼になっても老眼鏡が不要になりそうです。
近頃は30代・40代でも近視の進行が止まらないケースも増えているので、何とか-3.00D未満で抑えておくことも、非常に重要だと思います。
あ!もちろん、1.0までの視力回復を否定するわけではありません。
ご理解いただきたいのは「高い視力が必ずしも良いことばかりとは限らない。場合によっては視力が少し低い方が良い場合もある」ということです。
現状、理想的である-3.00D未満では、近視の進行が止まらないケースの方が圧倒的に多いので、それは何とかしないといけないと思っています。
決して「近視は有利だから放置してOK!」とは思っておりませんので、あしからず。